バケモノの子から教育がどうあるべきか今一度問い直そう

 

まず感想としては面白かったんですが、後半の展開が少し大味すぎたのと、お涙頂戴感が目に見えすぎたのもあって自分の中では失速感があったのが残念でした。

ただ引っかかたのはそこだけで、全体的には本当に楽しめました。物語とは主人公の成長を見せるものだけど、主人公を通して周囲もきちんと目に見えて成長していく様子がなかなか胸にくるものがあり、鑑賞後の爽快感は細田監督作品らしかったです。

ではこのバケモノの子という映画で監督は何を伝えたかったのか、自分なりに考えていきたいと思います。

主題と警鐘

繋がりとは血だけではない

血筋しか見ていない蓮の親戚と、蓮自身しか見ていない熊鉄。序盤でしっかりこの対比がしっかり示され、物語の展開的にも主題はこれだと思います。物語の中盤で、血の繋がりがある実父に強く当たってしまう蓮の描写もありました。人間にとって血は繋がりを示す重要な証拠です。しかし、時間もまた繋がりのためには重要な要素になり得るのです。

バケモノの子は、その繋がりを異種を使うことで強く表現した映画でした。

しかし、私はこの映画で伝えたいことはそれだけでなく、今の世の規制社会に対して警鐘を鳴らしているように思えました。何故私がそう感じたのか、記していきたいと思います。

白鯨

物語で蓮と楓を結ぶ重要なアイテムとして登場したメイブル著の『白鯨』。勉強不足のためにこの本を私は読んでいなかったので、wikipediaであらすじを読みました。

あらすじ

19世紀後半の帆船時代、アメリカの捕鯨船団は世界の海洋に進出し、さかんに捕鯨を行っていた。当時の大捕鯨基地・アメリカ東部のナンタケットにやってきたイシュメイル(物語の語り手)は、港の木賃宿で同宿した、南太平洋出身の巨漢の銛打ち・クイークェグとともに、捕鯨船ピークォド号に乗り込むことになった。出航のあと甲板に現れた船長のエイハブは、かつてモビィ・ディックと渾名される白いマッコウクジラに片足を食いちぎられ、鯨骨製の義足を装着していた。片足を奪った「白鯨」に対するエイハブ船長の復讐心は、モビィ・ディックを悪魔の化身とみなし、報復に執念を燃やす狂気と化していた。エイハブ船長を諌める冷静な一等航海士スターバック、常にパイプを離さない陽気な二等航海士のスタッブ、高級船員の末席でまじめな三等航海士フラスク、銛打ちの黒人ダグーやクイークェグ、インディアンのタシテゴなど、多様な人種の乗組員はエイハブの狂気に感化され、白鯨に報復を誓う。 数年にわたる捜索の末、遂にピークォド号は日本の沖の太平洋でモビィ・ディックを発見・追跡するが、死闘の末にエイハブは白鯨に海底に引きずり込まれ、損傷したピークォド号も沈没し、乗組員の全員が死亡する。ひとりイシュメイルのみが、漂流の末に他の捕鯨船に救い上げられる。

wikipediaより引用

熊鉄に瀕死の重傷を負わせた一郎彦は、連にとってまさに、マッコウクジラであったでしょう。悪の心が渦巻くビジュアルと共に、悪魔の化身と違わない存在になっていました。

その逆もしかりです。父親の地位を落とした、また自分と同じ存在である蓮に対する強烈な嫉妬心から一郎彦の目には、さぞ蓮は悪魔の化身に写っていたでしょう。

ただ、蓮は白鯨を知っていました。描写的に読了したのかは分かりませんが、楓からその物語を教えて貰っていました。もちろん楓からもらった赤いミサンガ? の助けもありますが、蓮の中に蓄えられた知識も蓮の悪堕ちを防いだことを助けたと思います。

両者の明暗分けたのは彼らが身を置いた環境でした。

知りたい欲を満たしてくれる環境と、うやむやにされる環境。

今の社会がどちらの環境であるかと問われれば、後者であるように思います。

賢人への出会いの旅

蓮達一行が各地にいる賢人に強さとは何かを尋ねにいくシーンがありました。賢人たちが各々己の強さの定義を持っていて、それが描写の表現も相まり非常に説得力があるものになっており、映像としても見応えのあるシーンに仕上がっていました。

ここで蓮が賢人たちの強さを聞いて、胸を踊らせていたのに対し、熊鉄は意味がないものと捉えていた比較もまた監督が伝えたいことの一部なのかと感じました。

知らないことを知ることは人間にとって喜びです。幼い頃は知らないことだらけでそれが顕著です。熊鉄は昔そういった環境下で育たなかったという描写がありました。

幼少時にそういった環境に身を置かなければ、蓮に出会う前の熊鉄のよう生きにくい大人になってしまうんじゃないでしょうか?

現代の規制社会に対するアンチテーゼ

以上のことから知りたいという感情に蓋をしてはいけないということを教訓にしている映画だったと感じました。

今は何かと規制、規制で真実を教えない事が多いです。偽物を教えられて、それが当たり前と思い成長して、いざその真実に直面した時に、果たしてその当人は真実を真実と理解できるのでしょうか。

純粋な知識欲に、教える側は誠実な対応を取るべきです。教育の本来のあるべき姿を、この映画からもう一度捉え直すべきではないかと、私はこの映画から汲み取りました。

 

時をかける少女 通常版 [DVD]

時をかける少女 通常版 [DVD]

 

 

 

サマーウォーズ [DVD]

サマーウォーズ [DVD]

 

 

 

おおかみこどもの雨と雪(本編1枚+特典ディスクDVD1枚)

おおかみこどもの雨と雪(本編1枚+特典ディスクDVD1枚)